ボロ戸建て投資本を読むと、指値の材料として度たび登場するシロアリ。
しかし、その生態や行動様式について詳しい方はそれほど多くないのではないでしょうか?
ボロ戸建て投資家にとって、指値材料を提供する友であり、物件を食害する敵でもあるシロアリ。
そんな、シロアリの実態と家屋の被害を詳しくまとめた書籍、
神谷忠弘著・『「床下」が危ない!』をご紹介します。
絶版本『「床下」が危ない』
本書は2003年刊行の絶版本。
中古本のみ入手可能ですが、
本記事作成の2022年7月時点では価格は500円程度からと安価に入手可能です。
ボロ物件投資を始めるにあたり、様々な書籍を読んだわたくし一休。
シロアリについては2、3冊程度しか読んでおりませんが、
本書が端的かつ網羅的に日本の住宅におけるシロアリ被害について解説していてオススメです。
イエシロアリとヤマトシロアリ
日本に生息するシロアリは複数種類いますが、
生息範囲が異なる2種類のシロアリが、家屋をしばしば加害。
イエシロアリとヤマトシロアリ。
2種類のシロアリは、生息する範囲が異なります。
イエシロアリについては、
イエシロアリのいる地域としては、東は千葉県の白浜付近、南は小笠原諸島、
北は(といっても白浜よりは南だが)山口県萩市付近、西は沖縄の先島諸島から台湾へと続く。
本州ではほぼ黒潮の到達点と一致する沿岸部だが、時折内陸部でも被害が見られるし、
大きな河川があると、それに沿っていくらか内陸に生息することもある。
引用:神谷忠弘著、『「床下」が危ない!』、2003年、p169
それに対して、ヤマトシロアリは全国的に幅広い地域に生息します。
前述したイエシロアリの地域を除くほとんどすべての地域は、
土壌性のシロアリとしてはヤマトシロアリのみの地域である。
ただし、北海道東北部や本州でもある程度以上の高地には生息していない。
引用:前掲書、p183
大規模営巣するイエシロアリがヤバい
イエシロアリとヤマトシロアリの2種類のシロアリ。
これらのうち、イエシロアリは大規模な巣を形成し、
家屋への被害が甚大になるものとして警鐘を鳴らしています。
大規模集中型のシロアリであり、短期間で家屋に甚大な被害を与える。
最悪の場合では家屋倒壊の危険性も考えられる。
引用:前掲書、p182
対策としては、
・基本的に通常の薬剤散布だけでは駆除には至らない。巣系を把握したうえで、
巣の機能を根本的に破壊することが駆除の決め手となる・遅効性で非忌避性薬剤を少量用いて巣系全体を死滅させるなどの方法がある
引用:前掲書、p182
イエシロアリは、大規模に集中的に営巣するため、
食害されている箇所に部分的に薬剤散布しても効果が薄い。
根本的に巣全体を駆除しないと、被害が再発して大規模化するとのこと。
それに対して、ヤマトシロアリは対照的な性質。
大規模な営巣はせず、分散して生きようとすることが多いようです。
ボロ物件を購入してシロアリが気になる場合、
イエシロアリ生息地域の場合には特に注意が必要になりそうですね。
(秋田はイエシロアリ生息地域じゃなくてよかった、一休心の声)
木が湿るとシロアリが湧く→迷信
シロアリについては、様々な迷信があると神谷氏は指摘。
木が湿るとシロアリが湧く、というのは迷信・俗論であるとしています。
問題はシロアリがその木材に到達できるかどうかである。到達できないか、
付近にシロアリが少ないか、どちらかの場合は木がいくら湿ったり、腐ったりしてもシロアリ被害にはならない。
逆に、木がいくら乾いていても、シロアリが到達してしまえば被害は起きるし、
シロアリが到達したときには、すでに水分が持ち込まれる状態になっている。
引用:前掲書、p75
シロアリは、木材のみならず、
物質があれば、とりあえずかじる性質があると本書で紹介されています。
(銅線やゴム管など、とにかく噛めるものは何でもかじってみる、とのこと)
シロアリが到達した先に木材があれば、その木材をかじり、
その結果、ボロ物件を食害するということ。
そのため、木が湿っているかどうかというより、
シロアリが生息している地域なのか、
床下へ通ずる部分や外壁などに、
シロアリが侵入できるスペースがあるかどうかの方が、
シロアリ被害の可能性を判断する材料としては適切なようです。
湿気が多いからシロアリが湧く→迷信
たとえ、土壌の条件がシロアリにとって好条件であったにせよ、
シロアリの侵入や加害を阻止する別の条件があれば、直ちに被害につながるわけでもない。
逆に、かなり乾燥している床下でも、ちょっとした家屋の構造的な条件がシロアリを導き入れてしまうこともある。
引用:前掲書、p76
このように、湿気が多いからシロアリ被害を受けやすい、
乾燥しているからシロアリ被害は受けない、という単純なものではないようです。
シロアリは、一定の時期に翅(はね)を持ち、
巣から飛び立ち(群飛、ぐんぴ)生息範囲を広げます。
この群飛によって、いままでシロアリがいなかった場所に降り立ち、
そこに侵入可能な家屋があれば、食害される可能性がある、ということ。
本書では、シロアリにまつわる様々な迷信、俗論をいくつか紹介しており、
それらを列挙していけばキリがないとしています。
シロアリについての間違った知識をあらため、
ボロ物件投資に役立てていくため、
非常に有益な書籍だったため、絶版本ながらご紹介することにしました。